この眼鏡っ娘マンガがすごい!第74回:井原裕士「雪乃すくらんぶる」

井原裕士「雪乃すくらんぶる」

学研『コミックNORA』1993年7月号~95年9月号

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前回に引き続き、スーパーマン・オマージュの眼鏡っ娘作品だ。本作はヒロインの苗字が「倉久」となっており、誰がどう見てもスーパーマン・オマージュと分かる作りになっている。というわけで、普段は眼鏡で三つ編みのヒロインが、眼鏡を外して三つ編みをほどくと怪力のスーパーヒロインとなるのだった。が、物語冒頭でいきなり主人公の広崎くんに、正体がバレてしまう。

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眼鏡っ娘の正体を知った広崎くんは、愛する眼鏡っ娘を守るために身体を張って頑張るのだった。この広崎くんが、非常によくできた男だ。世間のボンクラどもは目の前の眼鏡っ娘の魅力に気が付きもせずに変身後の「白雪仮面」に夢中になっているのだが、広崎くんだけは眼鏡っ娘の魅力にしっかり気が付いている。だからこそ、主人公にふさわしい。彼はスーパーヒロインの眼鏡っ娘に釣り合う強い男になるために、努力を惜しまない。正体がばれそうになったときに臨機応変なアイデアで眼鏡っ娘を守る、その機知と機転とド根性が見事で、惚れ惚れとする。ここまで人間がしっかりできた男は、めったに見ない。こういう男とくっつけば、きっと眼鏡っ娘も幸せになれるだろう。

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ああっ、もう、かわいいなあ。幸せにしてやってくれよ、広崎!

074_04眼鏡描写の見所は、やはり黒のセルフレームを丁寧に描いているところだろう。21世紀以降はさほどレア感がないので見落としがちではあるが、90年代前半にこのようにセルフレームをきちんと描く作品は、ほとんどない。そして、見事に眼鏡が似合っている。かわいい。
もうひとつの見所は、意識的に「貼り付き眼鏡」を利用しているところだ。普段の描写でも多少の貼り付きは確認できるが、ギャグ顔になったときの貼り付き加減はすさまじい。これがアクセントになって、本物の悪人が出てこない世界観に説得力が付与されているように思う。

実はスーパーマン・オマージュ系はシリアスとコメディのバランスが難しいように思うのだが、本作は最後まで安心して楽しめる。眼鏡っ娘の日常が丁寧に描かれているためだろう。

■書誌情報

単行本全3巻。古書で手に入る。

単行本セット:井原裕士『雪乃すくらんぶる』(学研、全3巻)

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