この眼鏡っ娘マンガがすごい!第46回:るりあ046「ファントムシューター・イオ」

るりあ046「ファントムシューター・イオ」

白夜書房『ホットミルク』1989年1月号~90年10月号

広い範囲で眼鏡っ娘がブレイクを始めたのが、客観的なデータから見た場合、1995年であることは間違いがない。その起爆剤となったルートは、おそらく主に3つある。ひとつめは伊藤伸平、西川魯介、小野寺浩二の発表の舞台となった雑誌『キャプテン』。ふたつめは解像度が上がったコンシューマ機でプレイ可能になったギャルゲーで、代表的なものが『ときめきメモリアル』。みっつめが、中村博文の中綴じカラー4Pが衝撃的だった雑誌『ホットミルク』。今回は、眼鏡黎明期における『ホットミルク』の重要性について。

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『ホットミルク』には、眼鏡黎明期を考える上で極めて重要な作品が2つある。ひとつは田沼雄一郎「少女エゴエゴ魔法屋稼業」で、もうひとつが今回紹介する作品だ。まず、絵がすごかった。

80年代後半のオタク御用達マンガと言えば、萩原一至か麻宮騎亜といったところだったが、残念なことに彼らはほとんど眼鏡っ娘を描かなかった。そんな眼鏡成分飢餓状態の中に、るりあ046は圧倒的な眼鏡っ娘を投入してきたのである。当時高校生だった私は、あっという間に心を鷲掴みされた。
046_03その絵柄は、いま見れば、80年代大友克洋の洗礼を受けた上で、かがみ♪あきら等ニューウェーブのエッセンスを良質に引き継いだ系統なんだろうと分かる。が、そこまでに蓄積された描画技術が眼鏡っ娘の形に具現化された時、これほどの威力を発揮するとは。それまでになかった魅力的な新しい眼鏡っ娘を生み出す。本来なら萩原一至や麻宮騎亜や、あるいは士郎正宗がやるべきであった仕事を、るりあ046が一人でやった。当時は単にかわいい眼鏡っ娘に心を鷲掴みにされただけだったが、いま冷静に振り返ってみたとき、それが極めて重要な創造であったと分かる。このあと、雑誌『ホットミルク』から次々と素晴らしい眼鏡っ娘が生み出されることになる。彼がいなかったら、眼鏡っ娘の歴史が数年遅れていた可能性すらあると思う。

ストーリー自体は、エヴァンゲリオンで最大限に昇華された類の、設定過剰説明不足の異能バトルだ。80年代後半からこの系統の作品が増加するわけだが、本作は眼鏡っ娘が活躍するだけでものすごく魅力的な作品になっている。特にギザジューを飛ばすシーンは、えらく印象に残った。

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そんな遠藤いおを世に送り出したるりあ046と、当時高校生で単に一ファンだった私が、15年後に同じ作品で仕事をすることになろうとは、お釈迦様でも気づかなかったのであった。いやはや。15年経っても、彼が描いた眼鏡っ娘は、やっぱりとても素敵だった。

■書誌情報

古書で手に入れるしかない。ちなみにエロマンガ雑誌に掲載されていたけれど、ちっともエロくないので、実用性には期待しないように。
単行本:るりあ046『ファントムシューター・イオ』(ホットミルクCOMICS、1991年)

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