この眼鏡っ娘マンガがすごい!第112回:愛本みずほ「愛がつまってる!」

愛本みずほ「愛がつまってる!」

講談社『別冊フレンド』1991年8月号

ズレ眼鏡描写が見所の作品だ。
藤村美織ちゃんは、眼鏡っ娘女子高生with三つ編み。成績優秀で風紀委員も務めており、カタブツだと思われているが、実はとても繊細で優しい女の子なのだ。

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そんな眼鏡っ娘が片思いしている相手が、宅配便のアルバイトをしている島田くん。学校では恥ずかしくて話しかけられないので、藤村さんは毎週自分で自分宛の荷物を出して、島田くんに会おうと考えたわけだ。

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そんな努力の甲斐もあって、だんだん島田くんと近づいていく眼鏡っ娘だった。この島田くんがよくできた男で、他の男子生徒が眼鏡っ娘のことを表面だけ見て誤解しているなか、しっかり人格全体を理解している。いろいろ邪魔が入ったりしてどうなるかハラハラする展開になるが、最終的に、島田くんは眼鏡っ娘のノートの字を見て、宅配便伝票の筆跡と一緒だということに気がつき、全てを察する。自分自身をお届け物として参上する島田くんもお茶目だが、島田くんの頬にハンコを押す眼鏡っ娘の行動も可愛すぎる。ここの一連の展開は、キュンキュンする。

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まあ、ストーリーそのものに眼鏡というアイテムが深く関わることはないのだが。本作で注意を引くのは、絵を見れば一瞬でわかるように、眼鏡の「ズレ具合」の可愛さだ。少女マンガでは80年代から頻繁にズレ眼鏡が描かれてきたが、本作のように太い眼鏡フレームでズレると、ズレ具体がいっそう際立つ。全体的にベタが少ない画面だから、さらに太フレームの眼鏡が光って見える。80年代に蓄積された少女マンガの眼鏡描写技法をわかりやすく鑑賞できる作品と言える。少女マンガで鍛えられたズレ眼鏡描写が90年代以降に男性向けメディアに浸食していくプロセスは、かなり重要な研究課題であるように思う。

■書誌情報

本作は39頁の短編。単行本『あしたきっとあなたに』所収。作者の眼鏡っ娘は他に3人確認しているが、みなさん可愛いズレ眼鏡。

単行本:愛本みずほ『あしたきっとあなたに』講談社、1992年

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