この眼鏡っ娘マンガがすごい!第25回:小林薫「善意の達人」

小林薫「善意の達人」

角川書店『増刊ASUKA大コメディー』1995年~97年

026_01前回に続いて、戦闘眼鏡っ娘。こっちはコメディーではあるけれど。

眼鏡っ娘を主人公とした少女マンガは、読み切りでは大量にあるけれど、逆に長期連載ものとなるとガクっと減ってしまう。そんな中、単行本5巻分も主人公を張ってくれた坂崎蘭々は大活躍といってよい。

坂崎蘭々は高校生眼鏡っ娘。平凡な生活をしていたが、ある日両親が事故で亡くなってしまう。天涯孤独になったかと思われたとき、生き別れになっていた兄二人が莫大な財産と共に現れた。ここから蘭々の波乱万丈な生活が始まるのだった。
二人の非常識な兄が巻き起こす騒動に巻き込まれながらも、蘭々は前向きに明るく乗り越えていく。蘭々は母親譲りのカンフーの達人。勉強もできるうえに戦闘も強い、凛々しい眼鏡っ娘……というよりは、実はそこそこセコくて現金で短気な庶民的キャラクターだったりして、そこがカワイイ。

026_03ただ残念なのは、日常生活では眼鏡をかけているのに、戦闘時には眼鏡を外してコンタクトにしてしまうところだ。もったいない、もったいない、無念なり。まあコンタクトにしてしまったばっかりに、目が痛くなってしまい、3分しかもたないのだが。それなら最初から最後まで眼鏡姿で戦ってほしいと思うのが人情というものだが、そこはコメディだから仕方ないのだろうか。重ね重ね、無念なり。

ところで、作者の小林薫の別の作品「桜子が来る!」の1巻には、脇役キャラで眼鏡っ娘が登場する。この眼鏡っ娘の名前が水戸泉というのだが(彼氏が霧島だったりと90年代の大相撲インスパイア)、そのイジメられエピソードが、なかなかビックリなので、ちょっと言及しておこう。なんと眼鏡をとりあげられ、もてあそばれているのだ!

026_04のび太ですら、眼鏡をとりあげられて「ははは」と笑われながら弄ばれるなんてことはないのに、高校生でこれは酷すぎる。この極悪ゴルフ同好会のチンピラどもは、もちろんこのあと正義の鉄槌を食らう。眼鏡っ娘からメガネを取り上げておもしろがるとは、万死に値することを思い知らせなければなるまいて。一方で眼鏡っ娘は片思いだった霧島くんと結ばれて、ちゃんと幸せになるのだった。うむ。

■書誌情報

古本で容易に手に入る。

単行本セット:小林薫『善意の達人』1~5巻(あすかコミックス、1995年)

単行本:小林薫『桜子が来る!』1巻 (あすかコミックス、1992年)

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