山本景子「CICA CICA BOOM」
集英社『マーガレット』2006年No.13~2007年No.1
ものすごい眼鏡マンガなので、ぜひとも自分の眼で確かめてほしい。強烈。
ヒロインは春日百々(かすがもも)。小学4年生から眼鏡だったが、高校入学をきっかけにコンタクトにするつもりでいた。しかし、だ。初っ端のエピソードで思わず「ブラボー!」と叫んでしまった。
なんとお父さんが高校入学祝いに32万円の眼鏡を買ってきたのだった! やったぜ親父! コンタクトにするつもりだった百々は、これで眼鏡をかけざるをえなくなる。
ここから百々にメガネの神様が降りてくる。入学早々、イケメンのめがね君が、入部勧誘で百々に声をかけてくる。あまりのイケメンぶりについていったところ、その部活は「眼鏡研究部(がんきょうけんきゅうぶ)」だった!
壁一面の眼鏡。ここは天国か? 部長・山田太郎の眼鏡パワーに圧倒されて、思わず入部してしまう百々。しかし世間は愚かな偏見に満ち溢れていた。廊下を歩いていると、いきなり百々の眼鏡がバカにされてしまう。悔しさに涙ぐむ百々。そこに部長登場! あっという間に眼鏡の素晴らしさを説き聞かせ、百々を救う。そして眼鏡を貶めるような愚かな発言をした女生徒に畳み掛けるのだ。
救われた百々は、部長のことも、眼鏡のことも、だんだん好きになっていく。しかし事はそう簡単に運ばない。部長は百々よりも眼鏡に夢中。百々は次第に寂しさを感じるようになっていく。部長はただ単に眼鏡を見ていただけで、私という人間のことにはまったく関心がないのだ、と。百々は固い決意を込めて、眼鏡を外してオシャレをして部長の前に立つ。しかし部長は「メガネはどうしたんだい?」と、眼鏡のことしか気にしない。いよいよ感情があふれた百々は、部活をやめると言って部室を飛び出すのだった……。
ああ、そうだ、これは西川魯介や小野寺浩二が全力でぶち当たっていった、あの難問だ。「私と眼鏡とどっちが好きなの?」って言われたところで、おれたちは眼鏡の君が好きなんだああ!ぐわあああ!
それはさておき、この作品も、「愛」とは何かについてしっかり結論を出す。眼鏡を突き詰めると「愛とは何か?」という問題に行きつき、さらに眼鏡を突き詰めるとその答えが見える。本作の結論も、美しい。
ここまでが読み切り部分だが、人気があったのだろう、連載が始まる。この連載でもパワーが落ちない。素晴らしい。眼鏡研究部と生徒会の対決で百々がミスコンテストに出ることになったり、そこであまりにも可愛かったため、眼鏡っ娘好きのストーカーに狙われたり。ストーカーに拉致されたときの絵が、またすごい。
壁一面の眼鏡っ娘写真。うーん、どこかで見たような、デジャヴ?って、おれんち?
ストーカー事件を眼鏡パワーで解決した後も、部長の妹(もちろん眼鏡っ娘)が大暴れしたり、温泉に部長と二人きりで閉じ込められたり、すごい眼鏡展開。
しかし、最終回はホロっとしてしまった。それまで受け身一方だった百々が、積極的に部長と部活のために動きまわる。眼鏡とは「見る」ための能動的なアイテムだ。最後の最後で百々は自分の意志で世界を変えていくことで、真の眼鏡っ娘となった。最初から最後まで素晴らしい眼鏡っ娘マンガだった。
20世紀には、こういうマンガが少女誌に掲載されることは想像もつかなかった。伝統の『マーガレット』に掲載されていたことの意味は、非常に大きい。
■書誌情報
単行本全2巻。単行本描きおろしの百々ちゃんコスプレイラストとか、とても気持ちいい。
古本の値段が安い今のうちにゲットしたほうがいいと思う。一家に一冊そろえておきたい。
単行本:山本景子『Cica cica boom』1巻(マーガレットコミックス、2007年)
単行本:山本景子『Cica cica boom』2巻(マーガレットコミックス、2007年)
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