まつもとあやか「BABY BABY BABY!!」
集英社『クッキー』2009年6月号
こんなん、表紙見たら買うだろぉ。長くて黒い艶やかな髪の毛で輪郭がきっちり区切られた端正な顔立ちに、シャープな眼鏡。目力の強い、鮮烈なクールビューティ。一瞬で恋に落ちるわ。
ということで、いつも女のことしか考えていないオツムの軽いバカ男が、眼鏡っ娘に一目惚れするお話。眼鏡っ娘は、男が語っていた「理想のタイプ」とは全く違うのだが、こんなん見たら惚れてまうのも仕方がない。ということで告白するが、もちろん一瞬でふられる。
適当にあしらう感じもクールでかっこいいねえ。ますます惚れてまうやろ。
が、男はあきらめきれず、美術室で絵を描いている眼鏡っ娘のところにおしかける。まんまと絵のモデルになることに成功して、ちょっとずつ距離を縮めていくのだが。実は眼鏡っ娘は美術部顧問の先生のことが好きだったのだよ。
いい表情だなあ。
さて、まあ、なんとなくの印象なんだけど、本作に限らずマンガで描かれる眼鏡っ娘って、怖い顔の男とか不良気味のオツム軽い男とくっついちゃう傾向にあるような気がする。個人的には眼鏡っ娘には真面目な男とつきあって幸せになってほしいので、軽くていい加減で浮気を繰り返しそうなヤンキーといい感じになるのはもったいなすぎて悔しい気がするんだけれども。まあ、そういう物語が求められる何らかの世間的な傾向があるということだろうから、私が悔しがっても仕方がない。むしろ、きちんと客観的に分析しておく必要がある事案として理解しておくべきだろう。
そんなわけで、この物語でも、軽くていい加減な男と眼鏡っ娘がいい感じになっていくんだな。まあ、眼鏡っ娘が幸せになってくれるんなら、応援するしかないがな!
さて、ところで。けっこうびっくりしたのが、同時収録の別作品「とらとマシマロ!」でも眼鏡っ娘がヒロインになっているのだが、これが「BABY BABY BABY!!」のクールビューティ眼鏡とは真反対のちんちくりん眼鏡っ娘ということだ。
同じ作者が描いた眼鏡っ娘とは思えないほど、印象に落差がある。ちんちくりん三つ編み+まんまる眼鏡の眼鏡っ娘。で、こちらも恋の相手も、数千人の暴走族を一人で仕切っていたという伝説を持つ極めてマッドマックスな男だったりする。ホームレスのジジィや鼻ピアスでタトゥーまみれの極悪ヤンキーが角材を振り回しながら画面を埋め尽くしたりして、少女マンガとして見るとちょっと不思議な作品に仕上がっているが、小動物のような眼鏡っ娘はすこぶる可愛い。
というわけで、一冊の単行本の中にクールビューティ眼鏡とちんちくりん眼鏡が同居していて、その落差がけっこう心地いい。世間的にはどっちのタイプの眼鏡っ娘が人気あるのかのう?
■書誌情報
「BABY BABY BABY!!」は36頁の短編。「とらとマシマロ!」は32頁の短編。どちらも単行本『BABY BABY BABY!!』に収録されていて、電子書籍でも読める。
Kindle版:まつもとあやか『BABY BABY BABY!!』集英社、2011年
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