この眼鏡っ娘マンガがすごい!第75回:環望+榊原瑞紀「ミス・マーベリックにはさからうな」

原作:環望+漫画:榊原瑞紀「ミス・マーベリックにはさからうな」

エモーション『YOMBAN』2009年2~8月号

075_02前回に引き続き、本作も戦う変身ヒロインの眼鏡っ娘作品だ。そして本格アメコミ作家として活躍していた著者らしく、きっちりスーパーマン・オマージュになっている。
他の作品と異なる大きな特徴は、変身ヒロイン眼鏡っ娘が新米の女教師という点にある。女教師だから眼鏡、そしてスーパーマン・オマージュだから眼鏡。残念ながらスーパーマン・オマージュなので変身後は眼鏡が外れてしまうのだが、女教師モードでは素晴らしい眼鏡だ。
そして倒すべき悪が、実はクラスの教え子3人組。オテンバ3人組は、科学の力を悪用して、街中に迷惑を振りまきながら大騒ぎ。このうち一人が眼鏡っ娘で、嬉しい。そして学校では教え子のイタズラに悩まされている女教師だが、変身した後は3人組をちゃちゃっと懲らしめるのだった。
しかし本当に倒すべき相手は、他の所にいた。めちゃめちゃ盛り上がる展開。生徒3人組のピンチに現れ、「私の生徒に手を出すな」と啖呵を切る女教師が、かっこいい。まあ、欲を言えば、眼鏡をかけてこのセリフを言ってほしかったけどね。

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075_01ところで「女教師だから眼鏡」と書いたわけだが。厳密に考えていくと、真実がもう少し興味深く見えてくる。1960年から70年代初頭のマンガ作品を見ると、女教師が眼鏡をかけているのはいいとして、他に看護婦もよく眼鏡をかけていることに気がつく。そして当時はまだ女性の社会進出が進んでおらず、女性が働く場所は限られていた。実は「女教師」と「看護婦」とは、当時の女性が社会進出する際の限られた選択肢だった。だから、「看護婦」がよく眼鏡をかけているという事実を踏まえれば、「女教師だから眼鏡をかけている」というよりは、「職業婦人だから眼鏡をかけている」といったほうが正確だということが分かる。アメリカの「スーパーガール」も、変身前はOLで眼鏡。つまり眼鏡は「教師」に限らず「職業婦人」全体の目印なのだ。となると、眼鏡を外そうとする圧力の意味も見えやすくなる。そこには、女性の社会進出を阻止し、全ての女性を娼婦化しようとするマッチョ的無意識が働いているのだ。

しかしもちろん本作は、そういったマッチョ的無意識とは無縁だ。本作は変身ヒロイン物語であると同時に、眼鏡っ娘が教師としての自覚と自信を強めていく成長物語でもある。教師として成長した眼鏡っ娘が眼鏡を外す理由は、何もない。

■書誌情報

電子書籍で読むことができる。

Kindle版:環望+榊原瑞紀『ミス・マーベリックにはさからうな』(Emotion Comics、2011年)

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