この眼鏡っ娘マンガがすごい!第1回:辻村弘子「親子三代メガネ美人」

辻村弘子「親子三代メガネ美人」

講談社『別冊少女フレンド』1975年2月号掲載

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この眼鏡っ娘マンガはすごい。まずタイトルがすごい。「親子三代メガネ美人」。この圧倒的な破壊力は、他に比べられるものが見あたらない。また実際に親子三代のメガネイラストがすごい。明治メガネ美人は矢絣の着物に庇髪、大正メガネ美人は三つ編みにセーラー服、昭和メガネ美人はリボンに縦ロール。みんなメガネが似合って、超かわいい!

001_01s セリフもすごい。メガネを恥ずかしがる三代目に、初代が言う。「メガネをかけているからふられたなどと、たわけたこというんじゃありませんよ」「おじいさんを見なさい、パパを見なさい、わたしたちのメガネなど気にもしませんでしたよ」。まあ、実際はおじいさんもパパも貴女たちをメガネで選んだんだろうけれどね☆。そしてまた初代はこうも言う。「メガネのあるなしで女の本当のよさもわからないような男はこっちからふってやりなさい」。メガネのあるなしで女を選んでいる我々にはブーメランになりかねない危険な言葉ではあるが、メガネを外せなどと言う糞男にはどんどん使っていこう。

ストーリー構成もすごい。ヒロインは最初はメガネを恥ずかしがっていて、彼氏にも近眼であることをカミングアウトできない。しかし初代の励ましと彼氏の理解もあって、ようやく眼鏡をかけることを選ぶ。このとき、眼鏡屋でメガネを選ぶシーンが極めて秀逸。彼氏は「メガネだってヘアスタイルや洋服とおなじでにあうものをえらべばきまるんだよ」と言って様々なメガネを試し、ひとつばっちり似合うメガネをみつける。「メガネをかけたきみって想像つかなかったけど、すごくかわいいや……」。まさにまさに。そしてなんと彼氏が選んであげたそのメガネは、ヒロインが最初からかけていたのと同じメガネだったのだ。これぞまさしく幸せの青いメガネ。女性の幸せが実はメガネとともにあるのだという、強烈な教訓とメッセージがこめられたストーリーなのだ。

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というわけで、全編通じてものすごいメガネ。この作品が描かれたのが1975年だから、それからもう40年経っているわけだが、まったく古さを感じさせないメガネ力に溢れる傑作だ。目を閉じれば、瞼の裏には四代目の平成メガネ美人も鮮やかに浮かんでくる。ああ、メガネ美人。時代がどれだけ移り変わろうと、常に眼鏡っ娘は美人であり続け、メガネは女性の幸せのシンボルであり続けるのだ。眼鏡っ娘に幸あれ!

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■書誌情報

「親子三代メガネ美人」は、辻村弘子の単行本『ユー・ミー伝言板』(講談社:1977年発行)に所収。40年近く前の本ではあるが、古本で比較的簡単に入手可能のほか、電子書籍で読むこともできる。
Kindle版:辻村弘子『ユー・ミー伝言板』
単行本版:辻村弘子『ユー・ミー伝言板 (別冊フレンドKC)』

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