竹崎真実「死に部屋」
朝日ソノラマ『ほんとにあった怖い話』1993年3月号~96年3月号
第42回だから、「死に部屋」ね。
ということで本作はホラーマンガなわけだが、一般的にいって、ホラーと眼鏡の相性はあまりよくない。ホラーに眼鏡キャラが少ないわけではないものの、残念ながら不幸になってしまう娘が多いなど、あまり良い役割をもらえていないのだ。が、本作は幸運な例外と言える。眼鏡っ娘にして作者のマンガ家・竹崎真実が主人公を務めることにより、眼鏡っ娘の不幸を回避できたのだ。
そして本作が素晴らしいのは、主要舞台であるマンガ家の仕事場にやってくるアシスタントたちが、ことごとく眼鏡をかけているところにある。マンガ家とアシスタントの眼鏡っ娘たちが全てのページで躍動しまくり、ホラーなのになぜか心が躍ってしまう。特に奇跡的な構図は、右に引用したカットに見られる。奥からマンガ家・竹崎真実、同居人のねこち、アシスタントのHさんと並ぶ、これはまさに眼鏡っ娘三連星。眼鏡っ娘三連星は、現実にはコミケ会場やアニメイトといった腐女子が集まりやすい場所で稀に見かけることはあるものの、マンガのカットで目の当たりにすることはまずないといってよい。本作の場合は、現実にマンガ家とアシスタントが眼鏡っ娘ばかりだったという事実が作品に反映しているわけだが、それを眼鏡っ娘三連星の構図に昇華しえた作者のツキは相当のものがある。確実に作者の頭上には眼鏡の星がある。
作者が眼鏡の星の下に生まれた証拠は、作中にしっかり描かれている。なんと我々の御本尊さま(小野寺浩二『妄想戦士ヤマモト』を参照のこと)が、眼鏡っ娘の命を守るという奇跡的なエピソードが描かれているのだ。まず、眼鏡っ娘が遮光器土偶を購入するシーンが素晴らしい。
眼鏡っ娘は遮光器土偶に「メリーちゃん」という名前を付けて、部屋に飾ろうとする。しかし部屋はマンガ資料等で埋まっていて置く場所を確保できず、しかたなくメリーちゃんをトイレに鎮座させる。ところがなんと実は眼鏡っ娘の借りた部屋は恐ろしい「死に部屋」で、鬼門から悪い気が次々と溜まってくる場所にあった。眼鏡っ娘は「死に部屋」で次々と恐ろしい目に遭う。もしもメリーちゃんが存在していなかったら、眼鏡っ娘は呪い殺されていただろう。そう、実はメリーちゃんは「死に部屋」の悪い気を吸収して自分が犠牲になることにより、眼鏡っ娘の命を守っていたのである。「死に部屋」から引っ越しした眼鏡っ娘は、今度はトイレではなく仕事部屋にメリーちゃんを鎮座させたのだった。ありがとう、御本尊様! 今後もなにとぞ眼鏡っ娘に御加護を!
■書誌情報
単行本『死に部屋』に所収。古本では微妙にプレミアがついており、入手難度はそれほど低くはない感じ。
単行本:竹崎真実『死に部屋』 (ほんとにあった怖い話コミックス、1996年)
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