この眼鏡っ娘マンガがすごい!第19回:鈴木由美子「Eかもしんない!」

鈴木由美子「Eかもしんない!」

講談社『Fortnightly mimi』1988年No.6~No.20

少女マンガの中には男性が入っていきやすい部類の作品があって、歴史的には眼鏡っ娘はそこを踏み台にして飛躍するきっかけを掴むのだが、残念ながら本作は最も男性が入りにくい部類の作風だと思われる。特に絵柄は男性の好みからはおそらく遠く離れており、読もうというモチベーションが湧きにくい恐れがある。だが、ぜひとも先入観を捨てて手に取ってほしい、絶対に埋もれさせてはいけない傑作の眼鏡っ娘マンガだ、というか、ヒロインの恋愛相手の樹由(きよし)の超絶メガネスキーぶりをなんとしてでも褒め称えなければならないのだ!

ヒロインの眼鏡っ娘大学生=秋絵は、血の繋がらない弟の樹由のことが好き。しかし血が繋がっていないとはいえ、弟に告白することもできない。一方、弟の樹由のほうも姉の秋絵のことを好きだった。が、こちらも独り立ちするまでは告白できないと考えており、表面上は普通の姉弟として暮らしている。そんななか、秋絵は弟のことをあきらめて、彼氏を見つけようと眼鏡を外して合コンにでかけようとする。このとき、玄関で秋絵を見送る樹由のメガネスキーぶりが素晴らしい!

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化粧をして合コンに向かう秋絵を呼び止める樹由。「キレイ」と言ってもらえると思って喜ぶ秋絵に、樹由は「メガネ、ほらメガネ忘れてるよ」と言う。しかし樹由の思いは届かず、秋絵はふてくされて玄関を飛び出す。残された樹由の、かわいそうな姿。眼鏡を手に呆然とする姿に、どれだけ眼鏡のことを思っていたか、哀愁が痛いほど伝わってくる。

019_04秋絵が合コンにでかけた後も、樹由は眼鏡を持ったまま、ぼーっと玄関で待ち続ける。どれだけ秋絵に眼鏡をかけてほしかったか。眼鏡を外してしまった秋絵にどれだけガッカリしたか。気持ちは、本当によくわかる。

ま、最終的には樹由の思いが通じて、秋絵は眼鏡をかけなおすんだけどね。よかったよかった。

そして連載第12回目の最終回では、いよいよ樹由と秋絵が結婚する。この結婚式がすばらしい。なんと、秋絵は眼鏡をかけたままウェディングドレスを着るのだ。あの小野寺浩二ですら実現し得なかった眼鏡de結婚式を、この樹由という男はやり遂げるのだ。メガネスキーの本懐である。私も、こうありたい。

■書誌情報

単行本:鈴木由美子『Eかもしんない!』全2巻完結 (講談社コミックス、1987年) 安く手に入るのは、当時人気があって数が大量に出ているから。ちなみに「由美子」という名前の作家は、みんななぜか眼鏡っ娘に優しい傾向がある。

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