源一実「イミテーション・ラブ」
セブン新社『恋愛美人if』2005年5月号
※以下、性的な話題を微妙に含みますので、その方面が苦手な方はご注意ください。
【起】本作のヒロイン佐伯さんは、もうすぐ三十路の眼鏡っ娘です。同僚には「地味」とか「色気ない」などとバカにされてしまいます。
佐伯さんは仕事も上手くいかず、落ちこんでしまいます。
【承】ところが気分転換にメイクに励んでみると、なんだか美人になったような感じがします。(実際には単にケバくなっただけのような気がしますが)
街に繰り出すと、さっそく男が引っかかるのです。バーで出会ったリョージは、佐伯さんのことをとても大切にしてくれます。佐伯さんは眼鏡を外した効果だと、最初のうちは嬉しいのではありますが。
【転】しかし、そんな恋は「ニセモノ」だと気がつくときが来るのです。
リョージが好きなのは「本当のわたし」ではないと、気がつくのです。「本当のわたし」とは、もちろん眼鏡のわたしです。眼鏡を外してモテてたとしても、そんな偽りの愛などそのうち滅びるのであります。
こうして恋は終わったかのように見えたのでありますが。
しかし、わかっている男は一味違うのであります。眼鏡をかけて現れた佐伯さんを、リョージはしっかり受けとめるのです。
【結】そう、できる男は、眼鏡が大好きなのです。眼鏡だから好きになったのです!
こうして佐伯さんは、眼鏡だったからこそ、本物の愛をゲットするのでありました。良かった!
そして本作は、実は女性向けのエッチなマンガであります。引用はしておりませんが、作中ではけっこう激しいベッドシーンが描かれております。(ひとつ残念なのは、ベッドシーンで佐伯さんが眼鏡をかけていないことなんですけどね)
女性向けのエッチなマンガというと、前世紀末に流行したようなレディースコミック(石油王に見初められる的な)を想像する方がいるかもしれません。が、実は21世紀に入る頃からレディースコミック系統は目立たなくなって、少女マンガのテイストを残しつつも激しいベッドシーンを見せるマンガが商業的に成立するようになってきております。
本作が極めて重要なのは、そういうHマンガにも、1970年代少女マンガで成立した「眼鏡っ娘起承転結構造」がしっかり確認できるところです。少女マンガで示された眼鏡の本質が性的描写と問題なく両立するということが、本作で証明されたのであります。末永く眼鏡でよろしくお願いいたします。
書誌情報
本編は32頁の短編。単行本『ひだまりの夢』所収。電子書籍で読むことができます。ちなみに本作、リョージも実はメガネ男子だったりして、面白いです。
単行本には本作以外にもベッドシーンを含む作品ばかりが収録されておりますが、キャラクターもストーリーもコマ割も丁寧に描かれていて、マンガとして読み応えがあります。即物的なエロが苦手な方でも、こういう愛情が籠もったラブシーンなら、気持ちよく読めるかもしれません。そして、ひょっとしたら、男性にもこういうタイプのHマンガが好きな人は多いかもしれませんね。
【単行本・Kindle版】源一実『ひだまりの夢』笠倉出版社、2011年
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