ひかわきょうこ「ちょっとフライデイ」
白泉社『ララ』1981年12月号~82年4月号
眼鏡っ娘の弥生ちゃんは、とある金曜日に眼鏡を割ってしまったので、眼鏡を新調しにメガネ屋に行くことにした。が、近眼でまったく前が見えないため、ドジばかり。困っている弥生ちゃんを助けてくれたのは、ザンバラ髪でハスキー・ボイスの男性。顔はぼけぼけで全く見えなかったので、記憶の中のハスキーボイスを頼りにミスター・フライデイを探す眼鏡っ娘だったが、そう簡単には見つからない理由があった……。
嫌な人間がまったく出てこず、ストレスを感じずに楽しめて、ほわっと温かい気持ちになれる物語。近眼エピソードが効果的に散りばめられていて、眼鏡的にも納得の物語展開。特にミスター・フライデイと出会うくだりでは、眼鏡が大活躍。ミスター・フライデイのセリフ「これは、あの日買ったメガネかい?」には、眼鏡が繋いだ二人の絆が凝縮されている。眼鏡とは、二つのレンズを繋げる架け橋の象徴だったんだね。
この作品は物語的にも近眼納得で素晴らしいのだが、かわいい眼鏡ビジュアルも必見。眼鏡を外したところよりも、眼鏡をかけているときのほうがきちんとかわいく描けているのが素晴らしい。めがねビジュアルの系譜を辿ると、本作は80年代眼鏡ビジュアルの本流に位置付けてよい作品だろうと思う。第11回で紹介した太刀掛秀子の作品が1980年で、本作は1981年連載開始。太刀掛秀子が70年代眼鏡ビジュアルを集大成したとすれば、それを引き継ぎながら80年代の眼鏡ビジュアルの方向性を示したのが本作と言えるだろう。両作を並べてみると、70年代から80年代への眼鏡ビジュアルの展開過程が分かりやすく見えるように思う。これを引き継ぎながらさらにビジュアルを推し進めて80年代半ばに花開く眼鏡っ娘萌えの基礎を作るのが竹本泉とかがみ♪あきらになるが、その話はまたの機会に。
そういえば、委員長の仕掛け人・マンガ家の山本夜羽も、ひかわきょうこの眼鏡に大きな影響を受けていたと言っていたように記憶する。本作が眼鏡っ娘描画史の里程標として重要な位置づけを持つのは間違いないだろう。
■書誌情報
古本で容易に手に入る。古本で1円なのは、人気がないからではなくて、当時人気がありすぎて大量に数が出回ったから。
ひかわきょうこ『ちょっとフライデイ』 (花とゆめCOMICS、1982年)
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