小野寺浩二「キミとボクとのインフィニティ」
竹書房『まんがライフMOMO』連載
まあ、いまさら私が語るまでもないのだが、眼鏡っ娘マンガ界四天王の一人、小野寺浩二のものすごい眼鏡っ娘作品である。
とりあえず小野寺浩二初心者に何かを薦めるとしたら、本作からがいいような気がする。シャレにならないキチガイどもが大活躍している他の作品から読ませると、ドン引きされるならまだマシで、場合によってはブロックされかねない恐れがある。本作は良質ラブコメ成分が含まれていて、まだ入りやすいんじゃないだろうか。
とはいえ、もちろん手を抜いているわけではなく、良質なラブコメテイストを保ちながら、ものすごい濃度の眼鏡だ。全編が高密度の眼鏡エピソードで充満されているだけでなく、眼鏡のあげかた講座など実践的に役に立つ知識・技能も盛りだくさんで、本作を知らずに眼鏡萌えを僭称することなど許されないという気持ちになってくる。
その中でも特に最も私の心に響いたのは、finalエピソードだ。なぜなら、メガネスキーにとって最も恐ろしい実存的問題に、真正面からぶち当たっていったからだ。
我々メガネスキーは、眼鏡っ娘が好きだ。その心に嘘や偽りはない。しかし眼鏡っ娘が好きだという思いが純粋であれば純粋であるほど、一つの矛盾に悩むことになる。「めがねならだれでもいい」のではないか? 一人の眼鏡っ娘を愛するというとき、相手の人格を尊重するのではなく、眼鏡だから好きなのではないかという疑問。その疑問に体当たりで勝負した西川魯介は『屈折リーベ』という不朽の名作を残したわけだが、本作もその最大のアポリアに逃げることなく取り組み、スペシャルな答えを見せつけてくれた。眼鏡に真剣に取り組んだ作者だからこそ、他の誰にも真似できない答えを見いだせる。生半可な気持ちでは絶対に出てこない解答は、ぜひ自分の目で確かめてほしい。私は感動で打ち震えた。
■書誌情報
Kindle版:小野寺浩二『キミとボクとのインフィニティ』(バンブーコミックス全1巻、2009年)
本作のノリが大丈夫だったら、ぜひ続いて聖典「妄想戦士ヤマモト」に進んで、小野寺ワールドにのめりこんでいきたい。
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