高口里純「獣の条件」
集英社『漫’sプレイボーイ』2010年
稲村まどかは、客観的に見たら、勘違いの痛い不思議ちゃんなんだろうなあ。まあ、眼鏡っ娘なので全面的に許す。というわけで、高校卒業後、女優を目指して上京する眼鏡っ娘。しかし当然そんなに簡単に女優になれるはずがない。そんな折、2つのキッカケが眼鏡っ娘に訪れる。ひとつは、キャバクラにスカウトされたこと。もうひとつは、ボディスタントとして芸能事務所に目をつけられたこと。眼鏡っ娘は、実は脱いだらスゴかったのだった。
ということで、スカウトされてキャバクラ店に向かうのだが、ここのエピソードがなかなか興味深かった。眼鏡を外したら、点目になって、ちっともかわいくないのだ。
まあそりゃあ、メガネをとったら、こうなるわな。
さて、そうこうあってキャバクラで働くことになった眼鏡っ娘は、自分では自覚していないものの、他に類を見ないモノスゴイ体によって、徐々に周りから一目置かれる存在へと変化していく。
一方、芸能事務所と契約を結んだ眼鏡っ娘は、ボディスタントとして映画の濡れ場を一本こなす。その中で、ちょっとした成長を遂げ、周りからもその特殊な才能を徐々に認識されていく。そしてその特異な存在は、周りにも影響を与え始める。そんな眼鏡っ娘が新たな世界にチャレンジしようとして……唐突に物語は終わってしまった。
高口里純の持ち味といえば、代表作『花のあすか組』にも鮮明に見られるように、キャラクターの独特な存在感の強度にある。独立自尊の個性をこれほど説得力溢れるエピソードで描ける作家は、なかなかいない。その持ち味は、本作でもしっかり発揮されている。主人公の眼鏡っ娘が醸し出す存在の強度は、一歩まちがえばただの不思議ちゃんになるところに、独特な魅力を纏わせる。この魅力的な眼鏡っ娘の今後が気になるところで唐突に物語が終わってしまったのは、とても勿体ないことだと思う。
作品自体は惜しいなあという感じではあるが、ともかく、「眼鏡を外したらブス」という世界の真実を描いたことは記録に留めておきたい。
■書誌情報
単行本:高口里純『獣の条件』(ケータイ週プレCOMIC、2010年)全1巻。
高口里純は、他にレディコミで眼鏡さんをヒロインとした作品をそこそこ描いていて、やはり男に媚びない独立自尊の凛々しい眼鏡姿を見ることができる。
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