竹内ゆかり「おしゃべり白書」
秋田書店『ひとみ』掲載(1985年頃)
眼鏡で始まった恋が、眼鏡でトラブルになり、そして眼鏡で結ばれる。すべてが眼鏡によって紡がれる物語。メガネスキーの横田先輩がまぶしい、完成度の高い感動の眼鏡マンガだ。
やよいちゃんは眼鏡っ娘。あこがれの横田先輩に近づくために放送部に入部しようとするが、入り口でショッキングな話を聞いてしまう。バカ丸出しな放送部員の勝木くんが「めがねはだめだ」と言っているのを聞いて、憧れの横田先輩も眼鏡のことを嫌っていると思い込んでしまったのだ! ショック!
しかし本当は、人間ができている横田先輩は、眼鏡っ娘のことが大好きだったのだ。この場面で横田先輩が言うセリフがかっこいい。「オレ、めがねの似合う子なら、ほんとは好きなんだぜ」。爽やかな笑顔でビシっと決めるに相応しいセリフだ。私もいちどドヤ顔で言ってみたい。
ゆかりちゃんが横田先輩を好きになったのは、実は眼鏡がきっかけだった。ゆかりが眼鏡をこわして困っていたときに、横田先輩が助けてくれたのだ。そして眼鏡が直ってお礼に行ったとき、ゆかりちゃんの眼鏡姿を見て、横田先輩もゆかりのことを好きになる。ここの横田先輩のセリフも素晴らしい。「めがね似合うんだね…」。どんどん使っていきたいセリフだ。
そして二人が結ばれるのも、もちろん眼鏡のおかげだ。放送室に忘れていった眼鏡を、横田先輩がゆかりちゃんにかけてあげる。ここでも「めがねの似合う子は好きなんだ」という決め台詞。かっこよすぎるぜ、横田先輩!!
世の中には、少女マンガでは最終的に眼鏡を外して幸せになる話が多いだろうと思い込んでいる人がいる。確かにそういうマンガもあるにはあるが、そんなくだらない話を描いた作家は、実は人気がなくなってすぐに消えている。人気少女マンガ家は、眼鏡を外してハッピーエンドなどというつまらない話は描かない。実力がある人気作家は、ほぼ例外なく、最終的に眼鏡をかけて幸せになるという物語を描いている。なぜなら、それが世界の真理だからだ。眼鏡を外した女に近寄ってくるのは、SEXしか頭にない脳無しのチンピラだけだ。女性の本当の幸せは眼鏡と共にある。無能な作家は眼鏡を外すことしか思いつかないが、力のある作家は眼鏡を上手にストーリーやキャラクター描写に組み込んでいく。本作も、『ひとみ』誌上で看板を張った作家ならではの本領が発揮されている。
■書誌情報
単行本:竹内ゆかり「おしゃべり白書」 (ひとみコミックス、1985年)に所収。ゆかりが主人公なのは第2話。
新刊では手に入らないので古本に頼るしかないが、amazonだとプレミア出品しかないなあ。古本屋を丁寧に回れば200円で手に入るとは思う。
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