この眼鏡っ娘マンガがすごい!第15回:くらもちふさこ「メガネちゃんのひとりごと」

くらもちふさこ「メガネちゃんのひとりごと」

集英社『別冊マーガレット』1972年10月号

015_01くらもちふさこのデビュー作が眼鏡っ娘マンガだったことは、いくら強調しても強調したりない、極めて重要な事実だ。
1980年代のくらもちふさこと言えば、押しも押されぬ少女マンガの看板作家で、特に都会派感覚にあふれるオシャレな作風で一世を風靡した。平成の世でも新たな作風で読者を魅了し続ける、常に進化し続ける超一流作家だ。その天才くらもちふさこは、眼鏡っ娘マンガと共に我々の目の前に現れたのだ。

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主人公のアコは、眼鏡っ娘。しかし眼鏡にひどくコンプレックスを持っている。東くんに片思いしているが、眼鏡コンプレックスのために告白する勇気もない。
しかし、思いがけずに東くんに自分の思いを伝えてしまう眼鏡っ娘。近眼のため、眼鏡を外していたから、目の前にいたのが東くんだと気が付かなかったのだ。しかし、ここで東くんが見せた態度が、決定的に男前だった。

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「だってメガネかけてるのよ」と涙を見せる眼鏡っ娘に、東くんは「メガネはきみの魅力だぜ」と世界の真実を告げる。東くんのこのセリフによって、眼鏡っ娘のコンプレックスは溶けていったのだった。かっこいいぜ、東くん!

015_04 1972年のデビュー作なのに、既にコマ割りのテクニックがすごい。眼鏡っ娘がメガネを外して近眼なところでは、コマの枠線がふらふら揺れて視界がぼやけていることを表現するなど、当時のプロの水準からみても新しい試みを各所に確認できる。天才の片鱗がデビュー作から見られるのだ。そして、そのデビュー作が眼鏡っ娘マンガであり、しかも「メガネはきみの魅力だぜ」というセリフに明らかなとおり、眼鏡のまま少女が受け入れられるというストーリーであったことは、少女マンガ史を考える上で決定的に重要な事実だ。少女マンガで「メガネを外して美人」などというのは、力のない無能な作家が考えなしに描いているだけだ。力量があるスター作家は、眼鏡っ娘が眼鏡のまま幸せになる作品を描く。本作はその事実を端的に表している、雄弁な証拠と言えよう。

■書誌情報

単行本:くらもちふさこ『赤いガラス窓』 (マーガレット・コミックス、1977年)に所収。amazonではプレミア出品が多いが、まだ手に入りやすい部類か。

あるいは文庫本:くらもちふさこ『わずか5センチのロック』 (集英社文庫)にも所収。こちらのほうが手に入りやすそう。
または大型ムック本『くらもちふさこの本』 (1985年)にも所収されているが、激プレミア。

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