この眼鏡っ娘マンガがすごい!第13回:岸虎次郎「マルスのキス」

岸虎次郎「マルスのキス」

ポプラ社『COMIC PIANISSIMO』2006年vol.1~2007年vol.4

013_01

眼鏡から始まり眼鏡に終わる、百合と眼鏡の奇跡的なコラボ作品。

013_02ギャル的生活を満喫していた由佳里は、席替えで眼鏡っ娘・美希の隣になる。最初は美希のことをネクラなガリベンと馬鹿にしていた由佳里だったが、美希が美術室のマルス像にキスしていた場面を偶然見かけたところから、急速に仲良くなる。眼鏡っ娘の素直さに触れているうちに、由佳里は次第に自分のギャル的生活に疑問を持つようになってくる。本当に自分はこんな生き方をしたかったのか? そんなある日、彼氏ができたと美希が由佳里に報告する。そこで由佳里は自分の本当の気持ちに気が付いて……

百合作品であると同時に、ストーリーの要に必ず眼鏡があるという、素晴らしい眼鏡作品。メガネ同志でキスをすると眼鏡がぶつかって「かちっ」と鳴るエピソードは、竹本泉も描いていたけれど、竹本泉の方は例のほんわか系なのに対し、本作のエピソードはとても切ない。そして温かい。切なくも温かい気持ちになれるのは、眼鏡っ娘が終始素直でまっすぐだからだろう。
013_03話も眼鏡的に素晴らしいが、ビジュアルも非常に秀逸。眼鏡をきちんと丁寧に描いてあって、とてもうれしい。特にすばらしいのは、あおりの眼鏡描写と、斜め後ろからの眼鏡描写。斜め後ろから眼鏡っ娘を見ると実際にはレンズの裏側が見えるのだが、それをきちんと描く作品はめったにない。本作はレンズの内側がきちんと見えて、それが極めてエロい。また、あおり角度の眼鏡描写は美しく描くことがとても難しいのだが、本作はさらっと描いてしまっていて、それが難しいことすら忘れさせてくれる。極めて高度な技術であることは間違いなく、そしてその技術は眼鏡に対するこだわりという裏付けがなければ不可能だろう。

ストーリー的にもビジュアル的にも眼鏡に対する深い理解が感じられる傑作だ。ありがとう、ありがとう。

■書誌情報

013_04どうやら新刊では手に入らなさそうなので古本に頼るしかないが、amazonだとプレミアがついちゃってて、ことごとく定価よりも高額に設定してある……。もっと広く行き渡ってほしい作品だなあ。

単行本:岸虎次郎『マルスのキス』 (PIANISSIMO COMICS、2008年)

ちなみに眼鏡同志でキスをしても、意識的に当てようとしなければ、なかなか当たらない。そこを意図的にカチカチ当てに行くのは、とても楽しいね☆


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