この眼鏡っ娘マンガがすごい!第105回:日向まひる「I miss you 後ろの席の厄介な男」

日向まひる「I miss you 後ろの席の厄介な男」

集英社『デラックスマーガレット』1996年5月号

不器用で意地っぱりな女の子が、眼鏡をきっかけに素敵な男子と知り合い、眼鏡をきっかけに仲良くなる、ハートフル恋愛マンガ。眼鏡っ娘の眼鏡を素直に褒めるといいことがあると教えてくれる道徳的教材として最適だ。

眼鏡っ娘のマリ子は高校2年生。新学期で学年がひとつ上がり、後ろの席になった男子に話しかけられるが、眼鏡をネタにされてしまう。

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まず、べっこう縁の眼鏡が丁寧に描かれていて、素晴らしい。描くのが大変だから、マンガでべっこう縁を見ることはめったにない。そしてマリ子が「このメガネ気に入ってんだからっ」と叫ぶのも素晴らしい。この時点で既に勝利の予感がするだろう。
後ろの席の手塚くんの眼鏡いじりは、さらに続く。クラス議員を決めるとき、颯爽と立候補した手塚くんは、相方としてマリ子を指名する。その指名の理由がすごい。

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うむ。見た目が委員長だから、委員長。『To Heart』で見たようなエピソードだが、おそらく本作では手塚くんの「方便」のような気がする。手塚くんはきっとマリ子と仲良くなりたくて、こんな手を使ったのだ。
そんなこんなで、ちょっかいをかけてくる手塚くんに対して、マリ子は当初はいい印象を持っていなかった。が、そんな悪い印象を大逆転させるきっかけを作ったのは、やはり眼鏡だ。

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手塚くんにイジられるのがイヤで眼鏡をはずして園芸部の活動に励むマリ子。眼鏡を外して美人になるなんてことはなく、やぶにらみになって怖い顔になっているというエピソードもちゃんと挟んであって素晴らしい。そこにやってきた手塚。またイジられるかとおもったマリ子だったが、手塚くんの台詞は予想外のものだった。「あのメガネは?」

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ここで炸裂する手塚くんの決め台詞を見ていただきたい。「よく似合ってるから」。これだ。眼鏡の女子にかけるべき言葉は、これだ。これ以外にない。マリ子の反応を見よ。眼鏡が似合っていることを褒められていやな気持ちになる女子がいるわけがない。
そして手塚くんは、マリ子が眼鏡のままでいてくれるよう、たたみかける。眼鏡の着脱を繰り返すと視力低下が進行することを理論武装として、眼鏡をかけ続けるよう説得するのだ。

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「ずっとかけてるほうがいいと思うなっ」と言われたときの、マリ子の気持ちの動き、この表情。一瞬で恋に落ちている。キュンキュンきている。眼鏡をかけ続けてほしいと言うと、女子はキュンとするのだ!

我々も手塚くんを見習って、眼鏡っ娘には「ずっとかけてるほうがいいと思うな」と積極的に声をかけていきたい。眼鏡をかけるよう女子を励ますことが、人としての正しい道なのだ。

■書誌情報

本作は60頁の短編で、単行本『むすんでひらいて』所収。なかなか素直になれない若者たちのハートフルな恋愛物語ばかりでキュンキュンするのだぜ。古本で比較的容易に手に入る。

日向まひる『むすんでひらいて』集英社マーガレットコミックス、1997年

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