夏元雅人「海底大戦争」
新声社『コミックゲーメスト』1994年2月号~12月号
主人公の眼鏡っ娘は、27歳。人妻だ。しかも妊娠エンド。おっと、この情報だけで帰ってしまうのは早計というものだ。これがまた、凄い作品なのだ。眼鏡っ娘の魅力こそが地球を救う決定的な鍵だという、素晴らしいメッセージが込められた作品なのだ。
眼鏡っ娘は、高原麗。地球殲滅を企む悪の組織D.A.S(Destroy and Satsujinという凶悪な組織名)と戦う、潜水艦のパイロットだ。夫の仁と一緒に戦っているのだが、ある作戦で、少女を助けるために身代わりとして人質になってしまう。
ガラの悪いグラサン+リーゼントの男に眼鏡っ娘が手込めにされてしまいそうな、絶体絶命の大ピンチだ!
と思いきや、敵のリーゼント男に保護されて、美しいドレスを着せられたりする。リーゼントは、人質にとった眼鏡っ娘に本気で惚れてしまい、寝返るのだった。さすが眼鏡っ娘!
そして物語は最終決戦に。ラスボスは、遺伝子操作によって人間の数十倍の身体能力を手に入れた新人類だった。改造新人類の身体能力の高さに、仁もリーゼントも、まったく歯が立たない。このままでは、地球が破壊されてしまう。ラスボスはついに眼鏡っ娘に襲いかかる。危ない、眼鏡っ娘!
と思ったら、あっけなくラスボスをボコる二人。実は愛する眼鏡っ娘がピンチに陥ったとき、仁の能力はリミッター解除され、尋常じゃないパワーを発揮するのだった。リーゼント男もまた同じ。眼鏡っ娘の魅力が二人の男の真の能力を覚醒させたのだ。そして、地球と人類は救われた。ありがとう仁、ありがとうリーゼント。そしてありがとう、眼鏡っ娘!! 眼鏡っ娘の魅力こそが人類と地球の希望の光であることが徹底的に描かれた作品なのであった。
ところで本作は、アイレムが1993年にリリースしたシューティングゲーム「海底大戦争」のコミカライズ版だ。ゲームでは、眼鏡っ娘の麗が1プレイヤーで、夫の仁が2プレイヤーということになっている。が、マンガ版では仁が1コンのような立ち位置で、麗と仁のポジションが入れ替わっている。そして私が確認した限り、オリジナルゲームでは麗が眼鏡っ娘という設定は見当たらない(もし設定を知っている方がいたら、ぜひ教えてほしい)。さらにもちろん、眼鏡っ娘が人質に取られることもなければ、胸元が大きく開いたドレスを着ることもなければ、眼鏡っ娘の魅力によって世界が救われることもない。このあたりの設定と展開は、コミカライズ担当者の趣味が反映しているとしか考えようがない。ありがとう、ありがとう。
それから、27歳の人妻という設定は、1994年だからこそあり得た可能性を考慮していいかもしれない。マーケティングによって登場キャラクターを取捨選択するような現在の萌え市場では編集者に通してもらえそうもない設定なわけだが、1994年には「眼鏡っ娘ってこういうものでしょ」という通念や臆断や偏見がまだ形成されていない。本作の眼鏡っ娘も、ステロタイプの眼鏡っ娘の要素はまったく含まれていないと言える。今の時代から見れば、それがとても新鮮に見える。素敵な眼鏡っ娘だ。
書誌情報
同名単行本全一冊。
夏元氏はマンガ以外にもイラストレーターとして活躍している。氏のキャラデザの仕事で、「ガンバード2」という彩京のアーケードゲーム(1998年)に登場するキャラクター「タビア」という眼鏡っ娘も、なかなか破壊力が高い。タビア画像検索。キャラ紹介の「優等生ではあるが、地味で虚弱体質」といったあたりから、キャッチフレーズの「空飛ぶ優等生」や、CVが皆口裕子というあたりまで、どうすればいいんだ。
【単行本】夏元雅人『海底大戦争』ゲーメストコミックス、1995年
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