いがらしゆみこ+原作/水木杏子「キャンディ♥キャンディ」
講談社『なかよし』1975年4月号~1979年3月号
眼鏡っ娘のパトリシア、通称パティは、キャンディの友達。単行本3巻で登場して以降、最後まで重要な役割を果たす。いや、もはやパティが主人公と言っても過言ではない。そうだ、キャンディなんて、もはやどうでもよい。キャンディ・キャンディは眼鏡っ娘パティの物語だ。
パティが一際輝いているのは、その彼氏、アリステア(通称ステア)のメガネスキーぶりに負うところが大きい。第一次世界大戦が始まり、ステアは周囲の反対を押し切って志願兵として従軍する。ステアは機械に強いという特技を活かして飛行機乗りとして活躍する。その飛行機にまつわるエピソードが、劇的に感激ものなのだ。
なんとステアは、自分の飛行機のエンジンカウリングに眼鏡を描いたのだ。そう、それは眼鏡っ娘の恋人パティの象徴。「この機のなまえはパトリシア……パティにはめがねをかけてやらなきゃ…」。眼鏡が繋ぐ二人の絆。物語はここでキャンディそっちのけでクライマックスを迎える。我々は、眼鏡っ娘とメガネくんの恋の行方に涙するのだ……
本作掲載誌の『なかよし』は、ライバル誌『りぼん』と比較した時、かなり眼鏡っ娘が少ない。特に70年代前半からハレンチ路線でエースを張っていたいがらしゆみこがほとんど眼鏡っ娘を描いていないのは、たいへん遺憾なことだ。その中で、パティは非常に貴重な眼鏡っ娘といえる。キャンディの能天気さにイラついた人々の中から、パティによって眼鏡DNAが発動した人々は相当数に上るのだ(個人的聞き取り調査)。似たような効果は柊あおい『星の瞳のシルエット』にも見られるので、その現象については機を改めて考察することとしよう。
ちなみに本作にはもう一人フラニーという優等生眼鏡っ娘が登場する。こちらの眼鏡っ娘も読者に強い印象を与えている。
■書誌情報
単行本や愛蔵版や文庫版など様々なバージョンがあるが、どれもこれも今では古本でプレミアがついているようだ。Kindleで読めないのは、大人の事情があったりするのかどうか…?
単行本セット:いがらしゆみこ+水木杏子『キャンディ・キャンディ』全9巻完結セット (講談社コミックスなかよし )
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