この眼鏡っ娘マンガがすごい!第126回:清原なつの「勅使河原松生の半生」

清原なつの「勅使河原松生の半生」

集英社『ぶ~け』1987年7月号

眼鏡の物理的機能である「見える」と心理的機能である「ほんとうのわたし」を効果的に組み合わせた不思議な異色作だ。本作のようなトボけているように見えて実は味わい深い作品が描けるのは、他には川原泉くらいなものだが、眼鏡っ娘を大量に描いているのは清原なつのの方だ。

さて、眼鏡っ娘ヒロインの則天門ひすい(愛称ひーちゃん)は、極度のイケメン好き。イケメンが好きすぎて、イケメンを見ると石になってしまう。ある日、うずくまっている男性に声をかけるが、眼鏡を壊してしまったのでどんな顔なのか分からない。その男性は、実は超イケメンの勅使河原松生だった。

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勅使河原松生は、自分のイケメン顔目当てに女が寄ってくるような生活に疲れ果てていた。そんな松生が、人生で初めて自分のことをイケメン扱いしない女に出会ったのだ。喜んだ松生は、ひーちゃんとつきあい始める。しかし、ひーちゃんは実際は極度のイケメン好きだ。眼鏡をかけて松生を見たら、たちまち石になってイケメン好きということがバレてしまう。ひーちゃんは眼鏡をかけずに松生とデートを重ねる。

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二人は、「平穏な日常的青春男女交際」を続けるために、メガネを忘れようとする。しかしもちろん、メガネを邪魔者扱いするような生活は、欺瞞でしかない。二人はだんだん欺瞞性に耐えられなくなってくる。

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ひーちゃんは、松生のイケメン顔を見たくなってくる。松生のほうも、ひーちゃんが男を顔で判断しない理想の女性だと思い込むようになってくる。しかし実際に見てしまったら、ひーちゃんのイケメン好きがバレて、二人の幸せな関係が完全に壊れてしまう。
この矛盾を端的に表現したセリフが興味深い。ひーちゃんは描き文字で「いやっ見たくない」と叫んでいる。そして同時に活字で「見られたくない」と思っている。「見たくない」と「見られたくない」というセリフが同時に発せられているのだ。
本コラムに長くお付き合いいただいている方には、このセリフが極めて眼鏡的であることに、既にお気づきだと思う。改めて簡潔に説明すると、眼鏡とは「見る/見られる」の権力関係を可視化するアイテムである。男どもが女性から眼鏡を外そうとするのは、女たちを単に「見られる」ための客体に貶め、「見る」という能動性を男が独占しようとする権力的な欲望の現れである。このような眼鏡の機能を踏まえていれば、ひーちゃんが「見たくない」と「見られたくない」を同時に発していることの意味が明瞭になる。能動的な主体であることを拒否することで、同時に見られる客体であることから逃走する、ということだ。
女性が権力の側(見る立場)に立つと、貶められる。東京都知事選で石原慎太郎が小池百合子に発したセリフは、典型的である。ひーちゃんは、自分が「見る」という権力を手にしたら、同時に自分の全人格が否定されることを理解している。これは中島梓が『コミュニケーション不全症候群』で喝破したように、「やおい」の基本構造でもある。おそらく清原なつのは、そのことに自覚的だった。次に引用するシーンに出てくる「ありのままの自分」というキーワードに注目したい。

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ここで描かれているのは、男性にとっては「見られる」ことが「勇気」であり、女性にとっては「見る」ことが「希望」であるということだ。常に視線を独占してきた男性にとってみれば、眼鏡をかけた女性に「見られる」こと、つまり女性に視線を譲り渡すことは「勇気」である。一方、女性にとってみれば、権力を獲得すること=視線を回復すること=眼鏡をかけることは、「希望」である。
二人は、あらゆる勇気と希望を、眼鏡に込める。

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眼鏡をかけたひーちゃんは、イケメンの松生の顔を見て石になってしまう。しかし松生は、そんなひーちゃんをしっかり受け入れる。松生の涙は、ひーちゃんの石化を解除していく。彼らの勇気と希望は、眼鏡によって愛へと昇華したのだ!

本作は一見するとナンセンスギャグの作品にしか見えないかもしれないが、眼鏡哲学的に考察を加えると、男女間の権力構造とその変容の可能性を浮き彫りにする問題作であると言える。

書誌情報

本作は48頁の短編。単行本『アンドロイドは電気毛布の夢を見るか?』所収。本のタイトルにピンと来た方には察しが付くだろうが、そういう作家である。本作以外の作品にも、<普通の少女マンガ>とは違う、不思議な味わい深い世界が描かれている。

単行本:清原なつの『アンドロイドは電気毛布の夢を見るか?』集英社、1987年

 

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この眼鏡っ娘マンガがすごい!第125回:落合尚之+神尾龍「派遣社員お銀」

作画:落合尚之+原作:神尾龍「派遣社員お銀」

『ビッグコミックビジネス』2004年10月26日号~06年2月16日号

125_01一見するとただのチャランポランでいい加減な男好きの眼鏡女子が、派遣社員として様々な職種に携わりながら、想像を超える超絶的な事務処理能力を発揮して、悪い奴らに陥れられようとしている善良な人々を密かに助けていく、一話完結の痛快ヒューマンドラマ。
要するに作品系譜的には「ブラック・ジャック」とか「ザ・シェフ」とか「ギャラリーフェイク」といった流れに位置付くわけだが、この系統の作品においては主人公キャラの出来がそのまま作品の質に直結する。その点、本作には決定的な個性がある。眼鏡だ。
単行本の後書で、作画の落合尚之がこう言っている。
「これまでヤング誌やオタク誌で若い読者向けの漫画を描き続けて来た僕にとって、ビジネス誌で大人の読者向けの作品を、という編集部からのオファーは、正直最初はあまりピンと来る物ではありませんでした。しかし、このシナリオに書かれたある一つの事柄が、僕の心をガッチリ捉えてしまったのです。「眼鏡」。主人公はメガネ美人。突如として心のスイッチが激しくONになっている自分。」
本作の核心にあるのは、作者自身が語っているとおり、眼鏡なのだ。主人公に眼鏡の魂が入った作品が、面白くならないわけがない。
この作者の発言がデタラメではないことは、次に引用するシーンに如実に表れている。

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お風呂シーンだ。だが、よくあるただのお色気シーンだと思ってはいけない。そう、お風呂で眼鏡をかけているのだ。銭湯でビールを飲みながら携帯で電話をかけている、眼鏡女子。このシーンだけで、初めて本作を読む人でも、一瞬でこのキャラの性格がわかる。
他のお風呂シーンでも、もちろん眼鏡は外れない。

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風呂に入るときにも眼鏡を外さない眼鏡っ娘だからこそ、超人的な職業スキルにも説得力が生じるのだ。
ちなみに「眼鏡と職業婦人」というテーマについては、眼鏡理論全体を考える上でも丁寧に掘り下げておく必要がある。1960年代のマンガを見ると、眼鏡をかけている女性というと、教師のほかに看護婦にも多いことに気が付く。そして女性の社会進出がそれほど進んでいない時、女性が就ける限られた仕事こそ、教師と看護婦であった。眼鏡はインテリやガリベンを表す前に、職業婦人の印だったかもしれない。

■書誌情報

単行本全一巻。電子書籍で読むことができる。後書を読むと、作者が本当にこの眼鏡っ娘を愛していたんだなあということがしみじみと分かって、嬉しくなる。

Kindle版、単行本:落合尚之+神尾龍『派遣社員 お銀』小学館、2006年

 

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この眼鏡っ娘マンガがすごい!第124回:新條まゆ「純愛ストリップ」

新條まゆ「純愛ストリップ」

小学館『少女コミック』2004年17号ふろく~05年2号とじこみふろく

124_06※以下、性的な話題が続きますので、苦手な方は回避して下さい。

どんくさい眼鏡っ娘が、「バスタード!!」のダーク・シュナイダーのような性格の自己中俺様男に体を求めらてエッチな目に遭いまくってしまう話。少女マンガでここまでド直球に性表現をぶち込んでくるとは、さすが新條まゆ。俺たちにできないことを平然とやってのける、そこに痺れる憧れる。

ヒロインの浜野優子ちゃんは、ガリ勉してもちっとも成績があがらない、できない眼鏡っ娘、中学3年生。一方、八神くんは勉強なんかしなくても常に完璧な成績、しかも超イケメン、運動神経もバツグンで、モテまくり。作中では「抱かれたい男東地区No.1」となっているが、「おまえ中学3年生だろう」などというツッコミが無粋に思えるくらい、超イケメン。そんな八神くんは、実は眼鏡っ娘のことが好きすぎたのだった。

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ツンデレすぎだろ、八神くん!
そんな八神くんが、眼鏡っ娘と一緒の高校に行くために、家庭教師として勉強を教えることになる。が、八神くんは一緒の部屋に潜り込めたことをいいことに、なにかにつけて眼鏡っ娘の体を狙うのだった。

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新條まゆを知らない人には信じられないかもしれないけど、これ、ふつうの少女マンガ誌に載ってるコマね。
で、問題を間違えたら一枚ずつ服を脱ぐ「試験問題野球拳」とか、スケベなことを英語でつぶやきまくって単語を覚えさせるとか、これが『月刊マガジン』のプチすけべマンガなら、主人公が三枚目だからコメディになるが、本作は少女マンガの超イケメンがやっているからシャレにならない。

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いや、やっぱりコメディだな…。つい笑みがこぼれてしまう。
しかし、押しの強いサディスティックな八神くんに、ついに眼鏡っ娘も処女を捧げてしまう。いったんエッチしたら、あとはエッチしほうだいだ。くそ、イケメンめ。

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しかしさすがに少女マンガだけあって、八神くんがイケメンなのは顔だけではない。全力で眼鏡っ娘を愛しているところが、全力でイケメンなのだ。世間一般的には浜野はブサイクとされているが、八神くんはそんなこと全くおかまいなし。八神くんの主観からは、浜野が世界一美しいのだ。そしてそんな眼鏡っ娘を、八神は全力で守る。眼鏡っ娘の容姿を悪く言ったバカ女に対して啖呵を切る八神くんは、めちゃめちゃカッコいい。

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この根拠のない自信を裏打ちにした謎の迫力の前では、バカ女どもも黙り込むしかない。八神くんのありあまる才能の全ては、眼鏡っ娘のためだけに発揮される。全力で眼鏡っ娘の体を求め、全力で眼鏡っ娘を守る八神くんに、惚れ惚れとせざるを得ない。私も、こうありたい。まずはイケメンにならなくてはな。
ただ、せっかくの初体験のときに浜野が眼鏡を外しているのだけは、いただけない。まったく、いただけない。これは、本当にいけない。画竜点睛を欠くとは、まさにこのことだ。しかたないから、私は自分で眼鏡を描き入れた。

■書誌情報

同名単行本所収。全3話所収で、内容はないに等しいが、突き抜ける迫力で読み応えがある。さすが新條まゆ。性的表現があるとはいえ、基本ギャグマンガとして読めばいいかなと思う。電子書籍で読むことができる。
Kindle版:新條まゆ『純愛ストリップ』小学館、2005年

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この眼鏡っ娘マンガがすごい!第123回:横谷順子「ハッピー♥プー」

横谷順子「ハッピー♥プー」

集英社『デラックスマーガレット』1980年1月号

本来なら「眼鏡de結婚式」が描かれているところに注目したいのだが、不本意ながらオナラに全部もっていかれてしまう問題作。
主人公の眼鏡っ娘マキは、眼鏡を外すと実は大人気女優のかずみ。しかし眼鏡っ娘マキのことを、誰も大人気女優だと気が付かないのだった。となれば、眼鏡をかけた本当の自分と女優である自分とのアイデンティティの葛藤がテーマとなりそうなものだが、本作は強烈な異彩を放っている。異彩というか異臭というか。マキは、おならをするのがくせになっているのだった。マキの放ったオナラでヤクザを撃退してしまうほどだ。

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そんなマキに、芸能記者の茂巳くんが近づく。最初は大女優かずみの取材をしようと思っていた茂巳だったが、だんだんマキと仲良くなっていく。マキは、茂巳の前では平気でオナラできるのだった。
ある日、喫茶店でマキと茂巳が二人でいるとき、マキがおならをしてしまう。そのときマキに代わって茂巳が喫茶店にいる客に謝罪する。

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いつもマネージャーにオナラをかばってもらっていたマキは、改めてオナラが他人の気分を悪くするということを自覚する。が、その自覚が悪い方に出てしまう。女優かずみとして記者会見しているとき、いつもなら自分がしたオナラをマネージャーがかばってくれるのに、無意識のうちに自分がオナラをしたと認めて謝罪してしまったのだ。清楚が売りだった大女優がオナラをしたということで、記者会見場は大騒ぎになる。
ここでヒーロー茂巳が男を見せる。

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茂巳はマキをかばう。が、マキにとってみれば、女優の「かずみ」ではなく眼鏡っ娘の「マキ」と名前を呼んだことのほうが驚きだった。誰も本当の自分に気が付かなかったのに、茂巳だけは自分に気が付いていたのだ。本当の私を理解してくれたことに感激したマキは、記者会見もそっちのけで、女優としてのキャリアを全て放り出して、茂巳に抱きつく。
物語はハッピーエンドを迎え、結婚式の場面。この結婚式が凄い。あの小野寺浩二ですら成し遂げられなかった眼鏡de結婚式なのだ。そしてまた、かずみとマキが同一人物だったことに茂巳が気が付いた理由が凄い。

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そして結婚式の真っ最中、いよいよ誓いのキスというときにも、オナラ。オナラで全部台無しになっているとはいえ、「眼鏡de結婚式」という実例が1980年に存在していることは事実としてしっかり押さえておきたい。

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■書誌情報

単行本『ほほえみベンチ』(集英社、1980年)所収。amazon古書でもヒットしないが、古本屋を丹念に回れば手に入ると思う。

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この眼鏡っ娘マンガがすごい!第122回:ろびこ「秘密の恋3 ビー玉の橋」

ろびこ「秘密の恋3 ビー玉の橋」

講談社『デザート』2008年4月号

眼鏡っ娘起承転結構造が美しい短編。
主人公のノブコさんは、自分に自信が持てない眼鏡っ娘女子高生。サッカー部の市井くんを好きになるが、告白なんてできっこない。そこで、ビー玉が埋め込まれた橋からビー玉を削り取ろうとしていた。「ビー玉を掘り出すと恋が叶う」という都市伝説が地元にあったのだ。眼鏡っ娘がビー玉を削り取ろうとしているところに、中学校の同級生、八木くんが通りかかった。

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後ろ向きな眼鏡っ娘を八木くんが元気づける。八木くんに励まされた眼鏡っ娘は、片想いの市井くんにアタックするために努力することを決意する。しかし残念なことに、間違った方向に努力をしてしまう。なんと眼鏡を外してコンタクトにしてしまうのだ!ガッデム!!
眼鏡を外したノブコに、市井くんが話しかけて、とてもいい感じ。天にも昇るような気持ち。しかしこれまで本コラムを読んできた方は、眼鏡を外していい感じになった気がしても、最後には必ず裏切られることを既にご存じのはずだ。それが世界の摂理だからだ。案の定、本作でも世界の法則はしっかり守られる。

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ノブコの間違った方向への努力は当然実ることなく、市井くんはあっさり別の女とくっついてしまうのだった。そしてさらに、ノブコはそのことにあまりガッカリしていない自分に気が付く。「あんまり好きじゃなかったのかな」とも思う。そしてコンタクトに何も意味がなかったことに気が付き、再び眼鏡をかける。

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再び眼鏡をかけたノブコは、八木くんとビー玉の橋で会う。そこで八木くんは、ビー玉を削り取って眼鏡っ娘に渡し、告白する。眼鏡っ娘も、実は八木くんのことを好きだった自分に気が付く。眼鏡をかけて、ようやく自分の気持ちに気が付くことができたのだ。

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054_hyouというわけで、本作のプロットは典型的な「眼鏡っ娘起承転結構造」となっている。が、もちろん過去の作品とは雰囲気は大きく異なっている。絵柄、コマ割り、ネームなど、実に洗練されたハイセンスな画面構成だ。しかしそれでも、「眼鏡っ娘起承転結構造」というプロットが共通していることが、決定的に重要な事実である。1970年代半ばの乙女チック時代に完成した「眼鏡っ娘起承転結構造」が、21世紀になってからのハイセンスな作品でも極めて高い説得力を持つことを、本作は雄弁に示している。

「眼鏡っ娘起承転結構造」が時代を超えた普遍的な説得力を示し続けるのは、時代に左右されない盤石な哲学的裏付けを持っているからだ。ヘーゲル弁証法に基づいた哲学的裏付けに関しては機会を改めて解説することとしたいが、具体的な作品として21世紀にも「眼鏡っ娘起承転結構造」が見られることは事実として確認しておきたい。

■書誌情報

本作は42頁の短編。単行本『ひみこい』第1巻に所収。『ひみこい』は全2巻だが、一話読み切りのオムニバス形式なので、本作だけ読む場合は1巻だけで話が通じる。

Kindle版:ろびこ『ひみこい』1巻、講談社、2008年

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鯖江に行こう!その4:宿泊事情

鯖江に行こう!

名古屋や大阪からなら日帰りでたっぷり遊べますが、東京からだと日帰りでは十分な時間を確保することがなかなか難しいかもしれません。ということで、宿泊に関する選択肢をまとめてみました。(あくまで個人的な経験を元にした見解です)

鯖江市内ビジネスホテル

鯖江市内にはビジネスホテルが4つあります。値段もリーズナブルで、場所も駅前が2箇所、めがね会館近くが1箇所と、利便性も高いです。一人で遊びに行く場合は市内ビジネスホテル利用が便利だと思います。
晩御飯は、めがね会館近くの「ながと」がおすすめです。眼鏡の聖地で「ながと」というところが、わかる人にはツボということで。おろしそばが美味しいです。

鯖江第一ホテル
ホテル・アルファーワン鯖江
ビジネスホテルおさむら
サバエ・シティホテル

鯖江市内温泉旅館

市内に温泉旅館があります。10畳の和室を一部屋とることになるので、一人だと割高料金ですが、人数が多くなると割安になります。豪華な夕食をいただいて温泉でゆっくりすると、王様気分になれます。眼鏡っ娘と一緒に行くと、温泉あがりで眼鏡が曇った美しい姿を拝むことができます。

三六温泉 神明苑

福井市内・武生市内のビジネスホテル

鯖江市内に宿が取れなかったときも、お隣の市に宿がたくさんあります。移動もそんなに大変ではないので、有力な選択肢として考えていいでしょう。

あわら温泉

DSC_2681北の方に少し足を伸ばすと有名な保養地、あわら温泉に着きます。老舗の温泉旅館がたくさんありますが、素泊まりでリーズナブルなお値段の旅館もあります。「せっかく遠出するんだから温泉にでも」という場合は、かなり有力な選択肢になります。
私が行ったときは、ニコニコ超会議の顔出しパネルも設置されていました。

越前海岸

鯖江から西に向かうと、夕日が美しい越前海岸に出ます。旅館がたくさん並んでいますが、ここの売りは、なんといっても美味しい海産物です。季節が合えば、特にカニが凄いことになってます。越前グルメを楽しもうという場合は、有力な選択肢です。値段もべらぼうに高いというわけではありません。また、車やバイクで移動する方は、越前海岸を走ること自体が楽しいと思います。

名古屋・金沢

一筆書き乗車券を使って鯖江で途中下車するという技を使う場合、さらに名古屋や金沢で途中下車してピバークするのも一つの手かもしれません。三連休などを利用する場合、名古屋や金沢まで寄っておけば、翌日の鯖江行きもラクになります。

というわけで、鯖江を楽しんでいきましょう!

 

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鯖江に行こう!その3:福井県歴史探訪

鯖江に行こう!

鯖江から少し足を伸ばして福井県(北嶺)を回ろうというとき、ちょっとでも参考になればいいかなという、みどころ案内です。私が実際に足を運んでおもしろかったところをご紹介します。

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■古代1:継体天皇

謎の天皇として、いろいろと想像力をかき立てます。万世一系の皇統を主張する向きからすると、ちょっと怪しい名前ですね。足羽山の中腹には継体天皇を祀った「足羽神社」があり、足羽山の頂上には継体天皇の石像があります。

■古代2:剱神社

織田一族の発祥の地として知られています。広大な境内は清楚な空気に包まれて、身が引き締まるような思いになりました。大雪で寒かったせいからかもしれません。信長マニアなら絶対に巡礼するべき場所です。

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■中世1:永平寺

山を登るように設けられている回廊がとても印象的な巨大寺院です。本来は非常に厳しい禅の修行が行われる場所ですが、観光客にとっては禅宗寺院特有の清楚で落ち着いた雰囲気がとても心地よいお寺です。

■中世2:平泉寺

いま、福井県でもっとも熱い史跡が、ここ。(個人的感想です)。山岳信仰を中核としたお寺ですが、注目すべきはその規模。最盛時には600もの僧坊が建ち並んでいたという、超巨大宗教都市でした。発掘作業がすすみつつありますが、その全貌はいまだ分かっていません。近くに無料のガイダンス施設が建つなど、観光地としても徐々に整備されつつあります。私が行ったときは深い雪に覆われてお堂までたどり着くことができませんでしたが、出土物をガイダンス施設で見学するだけでおなかいっぱいでした。

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■中世3:一乗谷城

ソフトバンクCMのお父さん犬の故郷として一躍脚光を浴びた一乗谷ですが、それを抜きにしても大興奮の歴史遺跡です。広大な館跡から、貴重な発見が相次いでいます。武家屋敷の一部も復元されており、観光地としての整備も進んでいます。しかし城マニアとしては、麓の居住地ではなく、山の上にある後詰めの城を攻めたいところ。私が上ったときは、眼下に虹が見えました。
また、近くにはAKB指原が打たれたという滝があり、そばで佐々木小次郎の銅像が見守っています。

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■中世4:明智神社

本能寺の変の主役、明智光秀が祀られている神社。娘の細川ガラシャ生誕地ということで、地元の人が大事にしてきたということです。神社自体はこじんまりとしていますが、明智光秀関連のグッズを収納した展示施設が、なかなか楽しかったです。

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■近世1:越前大野城

正真正銘の天空の城。「天空の城」は兵庫県の竹田城で有名になりましたが、城マニアとしては越前大野城の方がその名にふさわしいのではないかと思います。というのは、竹田城には建物が残っていないのに対して、越前大野城には天守(復元ですが)がある上に、隣の山から全貌を見ることもできます。越前大野の町も見所がいっぱいです。私が行ったときには、なんと天守に虹がかかりました。

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■近世2:丸岡城

DSC_0504城マニアなら絶対行かなければならない現存12天守のうちの一つで、しかも最古。とはいえ、私が行ったときには深い雪に覆われて、天守の中に入ることは断念せざるをえなかったのだった。また行こう。

■近世3:福井城

石垣と堀だけ残っていますが、城マニアとしてはみどころが多い城です。内堀外周にいろいろな銅像が立っているのですが、私が幕末で一番好きな人物、横井小楠の銅像があるのが嬉しいです。他にも橋本左内とか岡倉天心とか、なかなかおもしろい人物が揃っていますね。
他にも福井市内には、北の庄城跡など柴田勝家ゆかりの遺跡や展示、由利公正など幕末関連の史跡など、みどころがいっぱいあります。

■歴史的魅力満載の福井

というわけで、歴史に関心のある人には、福井県は魅力に満ち溢れた場所になるはずです。平安京からの距離が比較的近く、最先端の都の文化を十分に吸収しながらも、海を通じて大陸文化とも接していることから、独特の雰囲気を形成してきたように思います。福井県立歴史博物館や福井市立郷土歴史博物館も充実しており、見応えたっぷりです。

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鯖江に行こう!その2:鯖江みどころ

鯖江に行こう!

2016年5/27(金)~5.29(日)は、「サバエメガネメッセ2016」と「めがねフェス2016」が開催されます。鯖江のみどころについて、個人的な意見をつらつらと。

■サバエメガネメッセみどころ

「サバエメガネメッセ」のほうは福井・鯖江の眼鏡メーカーがこぞって参加ということで、本気の見本市が展開されると思います。職人技や新技術の実演や、めがね制作の体験工房など、アイテムとしての眼鏡そのものに興味関心がある方にとっては他にない魅力的なイベントになるでしょう。問屋や小売りの人の商談もあちこちで展開してそう。ビッグサイトで開催されているIoftよりも距離感が近くなる感じになるのかな。私自身、とても楽しみです。

■めがねフェス2016みどころ

「めがねフェス2016」は、昨年とは会場の場所が違いますが、同じ感じになると思います。「デイリーポータルZ」が去年のめがねフェス2015のレポートを掲載していて、これがよくまとまっているので、「眼鏡の町のめがねフェスに行ってきた」を読むと雰囲気がよくわかると思います。CutiePaiまゆちゃんのステージを愉しんでいる私の姿も、いつのまにか写真に撮られておりました。今回もまゆちゃんのステージがあるので、とても楽しみです。みんなのうたで「めがね」を歌っている井上侑さんも参加決定し、ステージは豪華になりそうです。
「めがねフェス」のいいところは、会場での距離感の近さですね。全国から聖地に集まったメガネスキーたちとの新しい出会いがたくさんあると思います。去年は天気もよかったので、晴天の下でめがねフードとビールを飲み食いしながら話をしているだけで、とても楽しい気分になりました。

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■めがね会館と眼鏡神社

今回はイベント会場が「めがね会館」から離れています。歩くと30分近くかかっちゃいそうですが、イベント当日はシャトルバスも出ているようです。鯖江に初めて遊びに行く人は、ぜひ「めがね会館」にも訪れることを強くお勧めします。こちらも「デイリーポータルZ」のレポートがまとまっていますね。
めがね会館敷地内には「眼鏡神社」もあって、「眼鏡の日」には神主さんが眼鏡供養を行っています。眼鏡神社にお参りすると、いろいろな御利益がありそうですね。

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■増永五左衛門翁の石碑

鯖江市内には眼鏡にまつわるものがたくさんあります。福井県に眼鏡産業を根付かせた増永五左衛門翁の石碑には、一昨年、膝まで雪に埋まりながら行ってきました。晴れたらまた改めて行ってみたいと思います。

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■めがね広告塔

昨年、鯖江のシンボル「めがね広告塔」がリニューアルされました。朝日新聞には、この広告塔リニューアルのために暗躍した「めがねっ娘教団」に関する記事も掲載されました。広告塔基部に据えられたネームプレートには、「めがねっ娘教団」の他、あろうことか「上条春菜」や「神原秋人」の名前が刻まれております。画期的だなあ。残念ながら近くに寄ることはできないので、今回はリニューアルされた勇姿を山麓から見上げることにする予定です。

というわけで、今からとても楽しみです!

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鯖江に行こう!その1:交通手段

鯖江に行こう!

眼鏡の聖地・福井県鯖江市で、2016年5/27(金)~5/29(日)に、「めがねフェス2016」と「サバエメガネメッセ2016」が開催されます。これを機会に、ぜひ鯖江に遊びに行ってみましょう。

■電車移動の場合

まずは電車での移動手段を確認しましょう。会場はJR鯖江駅から徒歩15分くらいです。

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名古屋と大阪からは、JR鯖江駅まで特急一本で行くことができます。

▼名古屋→鯖江 特急しらさぎ 約2時間30分
片道5,180円(運賃3,020円+特急料金2,160円)
▼大阪→鯖江 特急サンダーバード 約2時間20分
片道5,180円(運賃3,020円+特急料金2,160円)

特急を使わない場合は、それぞれ片道4時間弱くらいかかります。

東京からは、東海道新幹線を使うルートと、北陸新幹線を使うルートがあります。大宮あたりだと東海道新幹線を使うほうが運賃が安く済みますが、熊谷だと北陸新幹線のほうが安くなります。

▼東海道新幹線:東京→米原→鯖江 片道4時間強
片道13,550円(運賃8,420円+新幹線自由席4,540円+特急料金590円)
▼北陸新幹線:東京→金沢→鯖江 片道4時間半
片道15,600円(運賃8,750円+新幹線自由席6,260円+特急料金590円)

■裏技その1:一筆書き切符を利用しよう!

(東京・大宮周辺から出発の場合)
しかし実は、東海道新幹線と北陸新幹線を「一筆書き」で利用すると、単に東海道ルートで往復するよりも2,000円くらい安くなります。

▼東京→鯖江(途中下車)→東京 一筆書き24,940円
運賃内訳=運賃12,960円+東海道新幹線(東京→米原)4,540円+特急(米原→鯖江)590円+特急(鯖江→金沢)590円+北陸新幹線(金沢→東京)6,260円

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ポイントは、「東京→東京」の切符(米原・鯖江・金沢経由)を買って、鯖江には「途中下車」で降りること。単純に東京・鯖江を東海道ルートで往復すると27,100円かかるのが、一筆書きルートだと24,940円と、2,160円もお得になります。これは、距離が伸びれば伸びるほどコストパフォーマンスがよくなるというJR切符運賃の特性を利用した技です。また、東京・鯖江の距離が、東海道ルートでも北陸ルートでもほとんど変わらないからこそ成り立つ技になります。切符の有効期限も7日になるので、余裕があれば途中下車で金沢や長野や上田にも寄ることができます。もちろん反時計回りでも事情は同じです。
切符を買うときは券売機では買えないので、「みどりの窓口」で「東京から東京まで片道大人一人。米原、鯖江、金沢経由。東海道新幹線自由席を東京から米原まで、乗り継ぎで鯖江まで在来線特急券。さらに鯖江から金沢まで在来線特急券、乗り継ぎで金沢から東京まで北陸新幹線自由席」などと言って買います。この切符購入に成功すると、「ヤサイマシマシカラメマシアブラスクナメニンニク」という呪文が成功するよりも大きな充実感を味わうことができるでしょう。

■裏技その2:新幹線に乗ろう

(安城・豊橋周辺、あるいは神戸周辺から出発の場合)
鯖江に行くとき、新幹線に乗ったほうが安くなるケースがあります。これは、新幹線から在来線特急に乗り換える場合、在来線特急運賃が半額になることを利用した技です。
たとえば豊橋から新幹線に乗らずに名古屋から特急で鯖江に行く場合6,160円かかりますが、新幹線に乗ると6,060円と100円安くなります。新幹線に乗ったほうが安いのです。同様に、新神戸からは新幹線で新大阪まで行って特急サンダーバードに乗り換えるほうがお得になります。

▼新幹線を使わない場合:豊橋→鯖江 総額6,160円
内訳=運賃4,000円+特急料金(名古屋→鯖江)2,160円
▼新幹線に乗る場合:豊橋→鯖江 総額6,060円
内訳=運賃4,000円+新幹線自由席(豊橋→名古屋)980円+特急料金(名古屋→鯖江)1,080円

注意するのは、名古屋方面から鯖江に行く場合、米原で乗り換えるのではなく、名古屋で乗り換えるという点です。大阪方面の場合、京都ではなく新大阪で乗り換えるという点です。米原や京都で乗り換えると、新幹線のほうが高くなります。

■東京から車移動の場合

燃費やガソリン代にもよるので一概には言えませんが、往復高速代とガソリン代で合計50,000円くらい見ておけばよいかと思います。電車移動にかかる費用と比較したとき、2人だとトントン、3人以上だと車のほうがお得という計算になります。ただ電車だと移動時間が4時間強なのに比べて、車移動の場合は休憩時間なども入れて7時間くらいは見ておかないといけません。体力的にそこそこキツいので、ドライバーは2人用意するのがいいように思います。

■鯖江に行こう!

こうして見ると、鯖江というところは、東京から見たときに札幌や那覇よりも遠いところにあります。東海道と北陸道のどちらから行ってもほぼ同じ距離という、最遠の地であります。しかし、だからこそ「聖地巡礼」の功徳を積む意義があるというもの。この機会に、みんなで眼鏡の聖地を盛り上げていきましょう!

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この眼鏡っ娘マンガがすごい!第121回:つじ要「論理少女」

つじ要「論理少女」

講談社『月刊少年シリウス』2008年4月~11年2月号

眼鏡っ娘は知的である。実際、これまで私が調査した眼鏡っ娘キャラ1854人のうち、565人が知的キャラと設定されている。比率にすると30%だ。客観的なデータに照らしてみて、眼鏡っ娘が知的であると認識されているのは間違いない。
だがしかし。作品内で知的キャラと設定されていたとしても、読者が「この眼鏡っ娘は確かに知的だ」と納得できる具体的な描写があるかというと、それはまた別の話である。作者は自分の力量を超える知的なキャラを描くことはできない。知的なはずのキャラが「私にいい考えがある」と言ったとき、実際は死亡フラグが立っただけというケースも多い。実は、本当に知的な眼鏡っ娘キャラは、極めて貴重な存在なのだ。
本作は、その難しい領域に果敢に挑んだ貴重な作品だ。ヒロイン眼鏡っ娘=芝いつきは、「論理的に話しなさい」が口癖の知的少女。

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カッコよすぎる。眼鏡っ娘っぽさ全開のセリフ。自信満々にビシッと指を指す姿勢が素晴らしい。眼鏡っ娘にしてほしい仕草No.3である(当社比)。
そんな眼鏡っ娘だから、ファンも多い。密かにファンクラブも作られている。

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可愛くて頭のいいアイドル女子が8人いるという設定だが、そのダントツ頂点に君臨するのが眼鏡っ娘というのが、実に素晴らしい。

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腕を組んでこんなセリフ。これぞ眼鏡っ娘の極致。
そして本作が素晴らしいのは、単に設定上で知的としているのではなく、眼鏡っ娘が本当に知的に群を抜いて秀でていることを、具体的なエピソードを積み重ねて描こうとしている点だ。眼鏡っ娘は知的であってほしいという私たちの願いが、どストレートに表現されている。
それが本当に成功しているかというと論理的にツッコミどころがないわけではないのだが、そこはさして重要ではない。強く知的な眼鏡っ娘を生み出すというリビドーが溢れ出ている点が、真っ先に評価されるべきだ。「カイジ」のように人間性の汚い部分まで弄するような頭脳バトルに眼鏡っ娘を巻き込みたいとは、あまり思わない。知的眼鏡っ娘へのリビドーを感じつつも醜い人間性に踏み込まないという難しく狭い道を、本作は果敢に攻めているように思う。眼鏡っ娘には知的であって欲しいという願いとその描写の難しさが凝縮された作品である。

書誌情報

論理~論理~論理~ロリ♪たそがれロリータ(←40代以上限定ギャグ)。単行本全5巻。
単行本:つじ要『論理少女』第1巻、講談社、2008年

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